ダニエルの指が滑らかにカードをさばく様を、ヴァニラ・アイスは横目で眺めていた。
三十路を迎えた男の顔はどことなく機嫌が良さそうで――いつもの事だが――、何かを待ちわびている風にも見える。
糊の効いたシャツに、真新しいネクタイ。しっかりと整えた黒髪。多くの顔ぶれの中に見る彼の姿は、何ほども変わりはしない。

不意に、長髪の男の足許にカードが一枚滑り込んできた。赤いダイヤのマークを誇る、薄いカードが。


「すまないが」


前置きにそう唇を動かした後、やはり「拾ってくれるかな」と定番の言葉が出て来る。
ヴァニラにとっては拾ってやる義理も無いが、意味も付けずに断る理由も無い。
彼は溜息さえ吐かず、膝を折り、床板に貼り付いたかのような冷たく硬いそれを拾い上げる。
新品の白は良い香りがした。傍らの酒の空気を乗せて、ここまで漂ってきたのだ。 俗世間を捨てた彼にはあまり縁の無い、芳醇な果実酒のそれ。

何も言わずに笑みを浮かべるダニエルの元へ歩み寄り、ヴァニラはカードを置いてやる。
最早「いい加減にしたらどうなんだ」などと言う文句も出てこない、児戯にも近い戯れだった。




柊真様との会話で「実はダニヴァニやりたいんですよ〜」的な事を言ったら何と即興で書いていただきました!
いや〜、言ってみるもんだね!

気取っていて、それでいて悪戯っ子のようなダニエル兄さんが愛おしい・・・!!
律儀なヴァニラも可愛くていいです・・・
そんな2人の関係が素敵です。

あまりよそで見れないであろう、マイナーなカップリングへの欲望を満たしていただきありがとうございます!