白い石

 ダニエルは火の点いた煙草を唇から離し、ゆっくりと深く息を吐いた。肺から押し出されてきた白い煙が部屋の一部に広がり、緩やかに視界の内へ上ってくる。
 その向こうに、まるでその煙の色が纏い付いて染み込んでしまったかのような、純白の髪の男がいた。
向けられた背は天性の屈強さをありありと示し、少し眺めてみれば彫像に、数多の形を掘り出した者の逸品に似ていると思わされる。常なる無表情と腰まで届く長髪、求められなければ話さぬひどく寡黙な性分とが相まり、仮に血の通わぬ石造りの戦士として見詰めてみても、何故なのか、もしくは当然と言うべきか、これといった相違は見付けられそうにない。そう考え、真新しいコインの感触を確かめながらうなずいた。
 それは主たるDIOの命によって奪った女の魂であったが、連れてきたのは彼、ヴァニラ・アイスだった。気まぐれに、渇きは既に満たされているからというたったそれだけの理由で死んだ女を、彼はほとんど一瞥もせずに呑み込んだ。遠い異国から長い時間をかけて連れ去り、主の為にと大切にした女を、まったくためらいもせずに、だ。もし彼女を選んだのがヴァニラではなくテレンスであったなら、表情に出さなくとも内心不快な思いを抱いたろう。そして隙を作らない程度の苛立ちを何かにぶつけていたに違いない。
 ヴァニラはテレンスと言葉を交わし合っている内にかぶりを振った。その拍子に肩に乗っている、たっぷりとした雪白が零れ落ちてくる。
 ダニエルは煙草を一吸いしてから揉み消した。静かにろうそくを吹き消すように、ゆっくりと深く息を吐く。
煙の中で精悍な肉体が浮かび上がってくる。横顔を見せた生き身。光を好まぬ肌色に重なる、紅の幻視。
。  口元に気付かれぬ程度の微笑が浮かぶ。あれだけ鮮血を浴びてひざまずいている姿を目の前にしたのだから、もう少し鋭さのある衝撃を受けてもいいと、我が事ながらも奇妙に俯瞰して目を細める。
 しかし覚えていることも見ているものも、この彫像の如き戦士の忠誠が織り成す、清廉なまでの潔癖さ、なのだ。




なぜこんな話になったか忘れたけど(・ω・?)ダニヴァニSSを書いていただきました!
ただ、ヴァニラを観察しているだけなのに、ダニヴァ二臭がもわもわ香るのはなぜ!?

この空間に是非居たいと思ったのです(邪魔だ失せろ!!)